年末年始オークションで64,000円稼いだ夫の話
私と知り合うずっと前、大学生だった約10年前、夫はファッションせどりをしていました。ファッションせどりとは要するにブランド服の転売ヤーで、当時PtoP市場で一人勝ちしていたYahoo! オークションを主戦場に、安く仕入れ高く出すという資本主義のど真ん中を行く錬金術です。
といっても夫はファッション自体が好きだったそうで、オークションやフリマでちょっとシミがついたりして安く手に入ったブランド服を綺麗にして一定期間着て、飽きたらオークションに出すことでプラマイゼロ、もしくはプレミアがついてプラスでファッションを楽しんでいたとか。
ファッションにハマった夫は、服のためにジムへ通って体作りもしたそうです。もっぱら胸筋。なんで腹筋じゃないの? と聞いたら「腹筋辛いんだもん」とのこと。そうした上方に偏った体作りから自分に合うサイズを1cm単位で把握し、服を選ぶ時はメジャーで測ってから買ったそうです。フリマやオークションだと試着できないですからね。
靴は高値で取引できるので、多少の修理は自分でしていたそうです。靴はファッションの要ですからね。服のシミ抜きも上手いです。あらゆる洗剤を使い分け、時には高圧洗浄も駆使してシミを落とします。私はそういった能力がないので、時々まとめてやってもらったりします。
そうしてファッションにのめり込み、同時にファッションせどりのレベルもどんどん上がっていったある日。前日に仕入れた自慢のピンクのポロシャツを着た夫を見た友人が、開口一番こう言ったそうです。
「お前、ピンクの服で乳首立ってて、AV男優みたいだぞ」
そこで夫のファッションとファッションせどりと体作りが終わりました。
その友人には、私たちの結婚式で会った時、丁寧にお礼を言っておきました。
社会人になり家族を持ち時間も限られ、また市場も変化する中ほったらかしにされていたファッションせどり時代の在庫たち。正直結構あった。そして私は数回の引越しの間「あれ捨てないんだ…」と遠くから見ていました。子どもが生まれて、よだれや鼻水にまみれるようになってからはもっぱらユニクロだったので、着ている様子もなかったし。まぁ靴を洗練させることで、どうにかかつてのファッション王のプライドを維持しているようでしたが。
しかし今年の年末年始はエンジンがかかったようで、カウマエニークに出したあと
オークションにも安値即決で出品、在庫一掃にかかりました。結構売れています。夫がこの年末年始でオークションで稼いだ金額、64,000円。休日にも稼ぐ夫…
「いやー、でも服は売れないよねー。売れたのはほとんどガジェット。妻ちゃんの昔のiPhoneとかも売れたよ。やっぱガジェットだなー」
と言ってオークションで稼いだ金で買って帰ってきたのは、ABCマートの履きやすい(not洗練)スニーカー。靴には最後までこだわって、指定ブランドがあったのに。
「だってもう、長女重いし、公園で遊びやすくないと疲れちゃうし」
そう言いながらユニクロのモコモコパジャマに着替える夫に、モコモコの肌触りを求めて長女と次女が群がります。
夫、かっこいい。
この服もユニクロです