お坊さんに聞いた、私の育児が辛い理由
長女を産んだあと、私は荒れに荒れました。他の人はちゃんとできてるのに、自分は母親として何もできていないのではないかと思い悩み、自我のコントロールが効かないところまで行きました。長女を連れて2ヶ月くらい実家に世話になったこともあります。世話になってるくせにコントロールが効かないもので、母には相当当たり散らし、最終的には実家を飛び出すという訳わかんない行動にも至りました。
そんな暗黒期に「非日常を味わいたい」というリクエストに応えて、友人たちが飲みに連れて行ってくれました。育休中の会社の大掃除を手伝い、一杯引っ掛けて、いざ目的地は四谷三丁目の坊主バー。拓きたい!悟りたい! 育児ノイローゼの私を説いて!
正直バーテンの坊主は駆け出し坊主なのであまり説いてくれる感じではないのですが、たまたまやってきた会長が育児ノイローゼで法話してくれました。ちなみに会長はこの時一杯ひっかけてきたあとで、めっちゃ酒焼けしてました。
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育児ノイローゼになる人というのは、子どもが自分より大物になると思い込んでいる人です。子どもはね、あなたの子どもです。あなたくらいの人にしかなれません。
ところでお母さんはご存命ですか? あなたの近くにいますか?
「はい」
それはよかった。
ときに、あなたは今幸せですか?
「……はい、幸せです」
それはよかった。子どもはね、あなたのくらいの人にしかなれません。だから、あなたくらい幸せになれるってことなんです。
お母さんが近くにいるなら、あなたをどう育てたか、どういう思いだったか、聞いてみなさい。あなたを幸せに育ててくれたんだから。
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あの時の私は、欲張りでした。あれも、これも、身の丈に合わない願望ばかりが膨らんで、こんな風に長女を育てなきゃいけないんだ、そのためにはこうしなきゃいけないんだ、でもできない私はダメなんだ…。そんな思いにがんじがらめになって、自分を否定してばかりでした。
でも「幸せか?」と問われると、幸せなんですよ。夫も両親も支えてくれる。心配してくれる友人も、待っててくれる会社も、夢だった家もある。なにより、長女がいる。長女がこんな風になってくれるなら、これ以上何を望むというんだろう。
それですぐ私の症状がよくなったかというとそうでもないのですが、ちょっと心の荷物が軽くなった気がします。思い出すと支えてくれる言葉ができたのは、救いでした。ミーハー心で門を叩いた坊主バーですが、「極楽浄土」というカクテル代以上のものを持ち帰ることができました。
あれから約3年。長女はびっくりするくらいスクスクと育ち、生意気だけど優しい、次女が大好きな子になりました。次女が生まれて紆余曲折ありましたが今は安定して、私も安定して、幸せだなーでも10億円は当たって欲しいなーという普通の日々になって、ふとあの時の言葉を思い出して、気づいたことがあります。
子どもは私と同じくらい幸せになる。だから、私がまず、幸せじゃなきゃいけないんだ。とびきり幸せになって、その幸せを子どもたちにあげるんだ。
誰かのために、まずは私が幸せに。