機嫌の取りかた

自分の機嫌を取ることで世界を維持する。8歳と5歳の娘と夫と、東京の端で暮らす。

「勉強」せずして大学合格して見いだした、舐めきった人生観の話

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スポーツ選手が本番で「ゾーンに入る」とよく聞きますが、私は一度だけそれを体験したことがあります。受験本番の時なので「結局勉強をたくさんしたからでしょ?」と思われるかもしれませんが、むしろ勉強しなかったから入れたゾーンなのです。まぁ入っちゃったから、その後の人生舐めちゃったよね。

私は受験勉強からひたすら逃げていました。どのくらい逃げていたかというと、「仮眠」と言って夕食後に2時間寝て、「あー、やっぱり夜はちゃんと寝ないと脳が働かないよなー」と本格的に布団に入って朝までぐっすり寝ちゃう逃げっぷりです。それが高校3年の9月。ひどい。

もう勉強したくなかった! 基本はできるけど、基本以上がなかなか進まないのです。私のびしろが超短いタイプで、伸ばし方がわからない、マジで。概要は効率よくつかめるけど、深めていくことが本当に苦手で、専門性を帯びる大学受験っていうのは超壁でした。そんな自分の特性を理解して、幅広い分野にまたがる学際系の学部志望だったんですけど、入るまでが壁!

そこで私は推薦入試に賭けることにしました。否、そちらに逃げることにしました。受験科目は、小論文・討論・SPIみたいなの。SPIは足切りなのでほどほどに、討論は対策の立てようがない(みんな一般受験だったから、討論のハウツーが学校になかった)のでシミュレーションのみ。小論文対策に注力しました。

今ほど推薦やAO入試が盛んではなかったので、小論文指導といっても国語の先生に見てもらってちょっと感想をもらうくらい。予備校でオススメの対策本を教えてもらい、進研ゼミの小論文講座を併用しながらひたすら小論文を書く。という名の勉強からの逃避!! 小学生から漫画家を目指し、中高では小説家を夢見、ネットの海でどうしようもない思いをこねくり回しては言葉にすることが生きがいだった私にとって、受験に小論文が必要だからひたすら文章を書いているのよ!! という、勉強しない絶好の言い訳ができました。何かを考えて文章を書くことに「勉強」という感覚はなかったので、小論文なら仮眠せずに書ける。夜は寝るけど。まぁちょっとは学科の勉強はするけど、模試の結果とか見たくないレベルだったよね。

そうして迎えた受験本番。過去問からガラッと出題形式を変えた大学に、「鬼」って思いました。周りの受験生もざわついてました。がしかし、やるしかないので、どうにもまとまらない文章を書き留めていきます。

でも書いている主張が、当たり前すぎて面白くないことに気付いていました。
問いは松尾芭蕉の宇宙・人生観に関するコラムを読んだ上で、旅とは何かを答えなさい」
人生観を読んだ後だと「旅とは人生である」っていう絶対的で陳腐な言葉しか出てこないよね。しかも松尾芭蕉だぜ。でもこれで人目につく文章に仕立てるのは超至難の技。「前段コラムの逆を行け」のテクニックで小論文対策を積み重ねてきたけれど、もーどうしようもないくらい「旅とは人生である」が絶対的すぎて覆せない。
どうしようどうしようと思いながらも時間は進むので、陳腐な主張をうすーく伸ばして原稿用紙に貼り付けていきます。自分の言葉ではない。しかも面白い題材でもない。あ、これ落ちる? 一般入試の模試D判定ぐらいだったっけなー。やべー、浪人許されてないし、専門行く空気じゃないし、これひょっとして高卒フリーター?

なんて言葉が頭をかすった時、全身にばーーーーーんと雷が落ちた感覚がしました。
見えた。
残り時間は1/3。原稿は半分まで埋まっている。ここで全書き直しはリスクが高すぎる。でもーー
いける。
確信して私は原稿用紙に書かれた文章をすべて消しました。消しながら構成を組み立て、消し跡の残る原稿用紙にかじりつくように、でも書き直しのミスのないように、慎重かつ迅速に新たな文章を記していきます。
まさにゾーン。
溢れ出す文字、みるみる埋まる原稿。そのすべてを書き終えた時、なんとまだ終了の数分前。軽く見直して多少の修正を加え、ふーっと一息ついたところで終了の声がかかりました。その時私は確信しました。受かった、と。

その後討論・SPIもありましたが、討論グループ10人のうち7人がほとんど発言しなかったくらいしか特筆すべきことがないので略しまして、私はめでたく合格することができました。

さて、私がゾーンの中で見いだした「旅とは何か」ですが、前段コラムで「芭蕉はあらゆる人生、できごと、すべては流れるように宇宙へと繋がっている、すべては同じであると考えている」とあったので、「はて、芭蕉はこの世のすべてが同じと申しますが、芭蕉が好んだ「旅」とは、他と「違う」ところを見つけて楽しむものではないでしょうか。様々な違いを見つけ、そこにしかないものをそこで楽しむことが、私が考える旅であります」という、なんともこじらせた、もしくはこじつけた内容でした。

しかし勉強から逃げに逃げた結果、もたらされた合格。ありがたく頂戴しました。
そこから私の「苦手なところはどうにか回避して、得意なところでごまかしごまかし進んでいけばいいんじゃないの」という舐めきった人生観が確立されたのです。のびしろは相変わらず短いままなので、つぶしの効かない人生をひた走っています。

全受験生に送りたい。普通にちゃんと、勉強しとけ。
今週のお題「受験」でした。

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