機嫌の取りかた

自分の機嫌を取ることで世界を維持する。8歳と5歳の娘と夫と、東京の端で暮らす。

お通しは、ウソをつかない

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店の前に「お通しはお出ししていません」という張り紙を掲げた居酒屋があった。

それを見た時、少なからずショックだった。私は居酒屋のお通しが好きだ。

「頼んでないのに付けられるのが嫌」「食べたくないものが出てくるのが嫌」「余計にお金がかかるのが嫌」という声があるのもわかる。日本以外にはない風習だと、外国人とトラブルになることもあると聞く。

そんな世の中だから、「お通しが出ないこと」をウリにする居酒屋も出てくるだろう。

私がお通しを好きな理由

私は下戸だ。

飲むことより食べることで飲み会の時間を埋める。特に飲み始めはテーブルに何もない。この空いた空間が手持ち無沙汰で、落ち着かない。空きっ腹にゴクゴク飲むと吐くし。「すぐに出るメニュー」を頼んでも、すぐには出てこないし。

そういった時に、あらかじめ店が用意して、本当にすぐ出してくれてるお通しがありがたい。酔っ払う前のビミョーな空気を緩和してくれる。だから私は、お通しが好きだ。

学生の頃バイトしていた高所得おじさん向けの和食居酒屋は、700円と高めのお通し代をとっていたが、その分手の込んだつまみを1人ずつ3種類くらい盛り付けて出していた。季節も感じられ、持っていくとお客の顔が明るくなり、早くから酒が進んでいたように思う。私も残り物がまかないに出てくるのが楽しみだった。

一方、繁華街でなかなかふっかけてくる居酒屋に入ると、ドンと冷たい枝豆が運ばれてきて、「これで500円かー」とその後の飲み方も荒廃気味になるので、値段に合ったクオリティかというのは大きなところなのではないかと思う。

お通しはお店との最初の接点なので、ちゃんとしてると「この店はしっかりしてるなぁ」と嬉しくなる。あとだいたいその後の料理も美味しい。そしてだいたい周りの客層もお通しのクオリティに比例する。お通しは居酒屋のバロメーター。だから私はお通しが重要だと思っている。

望まれないお通し

ところで私は糖質制限中で、できる限り低糖質な食事を心がけているが、外出時のここぞ! という日は別だ。先日一人で外食できるという稀有な機会に恵まれたので、子どもがいては絶対に入れないラーメン屋に行った。そりゃあもう、清水の舞台から飛び降りる気分だ。

久々の糖質の予感にわくわくしながら食券を買って席についたら、「ランチサービスです」とスッと目の前に置かれた物が。

おにぎり。(チャーシューの端がちょっと乗っている)

これは…お通しか…?

「まずはスープをちょっとすすって塩っけで口を満たしてから麺へ…」と計画していたが、目の前に出されたものは口に入れてしまう性分なので、おにぎりを一口…まだラーメンはこない。また一口…そしてまた一口…半分くらいまで食べたところでラーメンがきた。

待望のラーメン! 待望の…あれ……? ラーメン欲が減退してる…だと!?

なんと、お通しのおにぎり(糖質)でお腹が満たされ、あの激しいまでのラーメン(糖質)への思いが薄れてしまったのだ! せっかくの久々の一人ランチ、久々の糖質…それがこの、お通しおにぎりで初速を失ってしまった…! 嗚呼! と思ってると麺が伸びるので、すぐに食べた。ちなみに早食いも糖質制限にはよくない。

「サービスでおにぎりつきますがー」と聞かれてたら断っただろう。自分が意図してない物でお腹が膨らんで、ご飯に向かうコンディションが崩れてしまう。こういうのを避けたくて「お通しはいらない派」が出てくるのかな、とちょっと理解した。

ちなみにそのラーメン屋、望まないお通しは付けてくるが、嫌ではないと思った。ラーメンの味も去ることながら、BGMが90年代オリコンヒットチャートなのである。

私がいる間に流れたのは、鈴木亜美「WhiteKey」T.M.Revorution「WHITE BRETH」広瀬香美「Dear…again」…季節柄、青春を騒がせたウィンターソング目白押しである。現在32〜40歳くらいのオリコン世代には刺さりまくりの選曲だ。

次はなにがくる? こうきたか! そうしていいるうちに望まないおにぎりも進んでしまった。

結局お通しがあるとかないとか、しょぼいとかしょぼくないのかではなく、美味しく楽しく食事ができるかなのだ。きっと。

★実験的にnoteにも同内容を掲載しています