機嫌の取りかた

自分の機嫌を取ることで世界を維持する。8歳と5歳の娘と夫と、東京の端で暮らす。

【映画】私はまだ、負けてすらいないから。/藤岡利充『立候補』

あなたはまだ、負けてすらいない

泡沫候補の選挙活動を追ったドキュメンタリー映画。維新旋風が吹き荒れる大阪府市長W選挙を、“スマイル党総裁”マック赤坂を中心に、3人の泡沫候補を通して映し出す。否、泡沫候補達を、選挙を通して映し出す。「負けると分かってなぜ戦う?」その疑問を追って。

マック赤坂といえば、泡沫候補好きの都民にはおなじみの、もう、端的にいえば「変なおじさん」である。


[字幕] 2011年大阪府知事選挙 政見放送 3 マック赤坂

これをNHK政見放送でやっちゃう。300万の供託金を払い、知事候補者として。でも立候補したところで表舞台には出てこない。「本命・対抗馬・他、立候補したみなさん」の「他、立候補したみなさん」にしかなり得ない。それに抗議しながらも、彼のヘンテコな選挙戦は続く。60歳を過ぎたおじいちゃんが、ホットパンツでマラカスを振って音楽に合わせて踊るだけの「街頭演説」では通りがかった外国人に「彼が知事候補? クレイジーね」と鼻で笑われ、「立候補したんならまともに政策訴えろや!」とじいさんに怒鳴られる。「職安で見つけて」ロールスロイス選挙カー運転手になった秘書と、「僕の中で会社とスマイルセラピーは、まっったく結びつきません」と言う息子(マックが設立したレアメタル輸入会社を継いだ)を巻き込み、マックは何度となく立候補する。

時に天使の格好をして、時に法を主張しながら、時に嫌がらせのような敵陣乗り込みをし、息子に「真面目に政策を訴えろ」「単に遊びでやってるとしたら幻滅する」と言われても、マックは奇妙なダンスと奇妙な主張を繰り返す。そして(当たり前のように)負ける。

こんな破天荒でわけのわからない映画で、私は泣いた。しかも映画館で見て泣いて、DVDで見ても泣いた。「はぁ? マック赤坂で泣くの?」と言われるのは当たり前だ。でも私は泣いた。そして心の底から何か煮えたぎるような、突き動かされるような衝動を感じた。やらなきゃいけない、進まなきゃいけない、だって「あなたはまだ、負けてすらいない」のだから。

大阪W選挙敗北後、マックは懲りもせずまた立候補した。多数の日本国旗がはためき、ニッポン!ニッポン!とコールが上がる秋葉原、皆が安倍晋三麻生太郎の登場を待つ中、またしても敵陣で声をあげるマック。罵声が注がれる。やがてそれは大きなうねりになる。「帰れ!帰れ!」

「たった一人でやってんだ! だったらお前がやってみろ!」
「そんな元気がいいなら、てめぇが立候補しろよ!」

大勢の「支持者」の元に飛び出したのは、息子だった。
マック赤坂は、真剣なのだ。

私は本気だろうか? 誰に何を言われようと、貫いているだろうか? 大きな流れに飲まれて、声を失っていないだろうか?
私は「立候補」できているか?

DVDのほか、TSUTAYA店舗で貸出、iTunesNETFLIX等にて配信中。
週明けちょっと会社行きたくないなって思ってる人にオススメしたい。
ちなみに「本作品は特定の政党や候補者を支持・応援する映画ではありません。」ので、私はこの映画を見た後もマック赤坂に票を入れたいと思ったことは、一度もありません。

映画「立候補」 [DVD]

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