機嫌の取りかた

自分の機嫌を取ることで世界を維持する。8歳と5歳の娘と夫と、東京の端で暮らす。

パワハラにすり潰されて休職した話(後編)

1年ちょっと勤めた会社を休職しました。このまま退職する予定です。前編はこちら。

fumisiobox.hatenablog.jp

つらいのは、自分がコントロールできないこと

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裸足で会社を飛び出して(比喩)から、どれくらい経ったのか。1週間か、2週間か、3週間か…
よくわからないのは、体調の乱高下が激しすぎたから。一日中布団の中にいることもあれば、炎天下で外構とベランダの掃除をしてからジムでヨガしたり、頭の中が地獄みたいになったり、ついでに子どもが流行RSウィルスに感染したり(入院まではしなかった)、粗大ゴミを捨てた足でジムで泳いだり、漠然とした将来への不安に押しつぶされそうになったり。
「調子悪い」っていうのは、床に伏しているだけでなく、「自分が制御できない」ってことで、これがもう、休んでからずっと続いて、辛い。自分を見失ってバッタンバッタンするたびに、あーもうこんな壊れてたのかー!って驚く。なんとか保ってたのが、パンと弾け飛んだんだなーって。

でも、上司からなじられたことをシャワー中に思い出して奇声をあげたり、頭の中がぐっしゃぐしゃになってソファの肘置き(ここだけ木)に頭打ちつけたり、むやみに子どもに当たったりすることがなくなった。
まだ突然涙が出たり、スーパーで買うべきものがわからなくなって呆然として帰ってきたり、料理の手順が思い出せなかったりすることはあるけど、オフィスがある階のボタンの重さとか、会議室に呼ばれる時の周囲の目とか、的外れなフォローとか、誰も何も言い返せないよう選び抜かれた言葉とか…それともう関係ないんだと思うだけで、救われた気持ちになる。

「ふつう」ができなくなること

もちろん、上司や会社が100%悪いわけじゃない。私にも大いに反省すべき点があった。あそこで何かしらの成果をあげている人はいるし、どこに行っても嫌な上司や理不尽なことはあるのだろう。でも、なんだかもう、私には、無理でした。

会社側から見れば、ある日突然気分が悪いと午後休を取り、翌日家族が診断書を叩きつけてきた、謎の社員だ。新人でありながらありがたくも抜擢された社運をかけたプロジェクトをほっぽり出し、雲隠れし、うんともすんとも言って来ない、会社始まって以来の不良品ゴミ社員。私もそう思います。社会人としてダメ。お話にならない。
社会には義理がある!世話になった人には自分で語り、キチっと筋を通し、退職時期を調整し、引き継ぎ期間を経、各部署に菓子折りを持って周り頭を下げ、定時後に送迎会をこなし、ありがとうございました!とやりきって初めて、「ふつう」だ。

私も何度もそのシミュレーションをした。休む一ヶ月前くらいはずっと、「円満退社円満退社」と考えていた。休む一週間前くらいは、午前中ずっと「いつ辞めよう、どう辞めよう」と考えていた。どうにか正気を保ったまま、表面上はなにもなく、そっと去りたい。
そのために、目の前の仕事をただひたすらやっていた。終わらせたい、そう思って上司の言うことを形にすればするほど、要求はどんどん変わっていった。芯もなく、あっちにこっちに、目まぐるしく。そしてある時、ポキっと折れた。心が折れた。辞める前に折れた。それだけだ。「ふつう」に立てないほど、折れただけだ。

今は休職中だけど、このまま退職する。お盆があるから、そこで何かしら整理して、退職しようと考えている。すみませんとか、申し訳ありませんとか、私の力の至らぬところですとか、そういう言葉が必要とされているんだろう。果たして私はそれが言えるんだろうか。「ふつう」じゃない私に。

愛と打算

上司には恩がある。育休明けに残業なしで正社員で転職なんて無謀だ。それを拾ってくれた。私を買ってくれたのが嬉しかった。衝突も多かったが、ずっとなじってたわけじゃなく、またがんばろうと前を向けるような言葉をもらったこともあった。恩もあるし、またがんばろう…となんとか奮起してきた。なにしろ、子持ち(しかも病児)で正社員転職なんて、凡人にはもう無理だから、この会社にすがりつくしかないのだ。

…おっと! 私は昔、これに似た経験をしている。上司の機嫌という激しい渦の中にいながら、ハタと気づいたのは、「恋人と別れる直前の打算」だ。

私は何故かとてもいい人と付き合える。歴代彼氏、みんないい人であったと胸を張って言える。なんなら結婚式にまで招待したい人が3人くらいいた。が、歴代彼氏たちみんなとうまくいったかというと、そうでもない。付き合ってる期間中、7割は険悪だったのでは?という人もいる。ちなみに残りの3割はすごくラブラブだ。周囲に「あいつはいい奴だよ!」と太鼓判を押されたし、スペックだって申し分ない。実際いい人だ。が、7割険悪だった。なんか険悪。でもがんばった。なにしろ3割はラブラブ要素があったから。いい人だし。でも付き合っていくうち、互いに疲弊していくのがわかった。その時私は思った「なんかどうにも合わないけど…客観的に見ればいい人だし…公認の仲だし…(車持ってるし…職業安定してるし…)」ーーーーーーって、打算じゃーん!!

恋人と次にいつ会うか考えた時、打算が出てきたら、それはもう、終わっているってことだ。愛はない。
会社も同じ。恩はあれど、打算だ。仕事とは打算だと、割り切れる人なら問題ないだろうけど、会社生活の97%が荒れているところで割り切れるほど私は大人ではない。素数だし。

打算は「病児持ちで残業なし正社員という立場」。正直この立場を逃してしまうのはとても、とても痛い。35歳。いろんな人生設計狂ってくる。あらゆる分野でどちらかに過度な負荷やリスクが集中するのは我々夫婦の理念に反するし、夫の収入だけで病児持ちという不確定要素を乗り切れるほど、現代はイージーモードではない。それでも夫は「いいよ、もうやめちゃいなよ、そんな会社」とあっけらかんと言った。

そうだ、私は夫と結婚した。私はこれを、私の人生最大のラッキーだと確信している。
付き合うとか別れるとかかが、人生的に結構な重みを増してくる年齢のころに7割険悪だった彼氏と別れ、1年くらいフラフラしたころに、夫と出会った。合コン的なものだったけど、その後、ぽんぽーんと結婚した。この人なら大丈夫だから、と迷いはなかった。それは大正解だった。夫はマジでいい人だ。これについて書き始めると文字数が溢れるのでまたの機会にするとして。
だから大丈夫だ。7割険悪彼氏と別れなきゃ、夫と出会わなかったのだ。なに、別れをひきずったのだって、たかだか数ヶ月?くらいだ。
それに、「合わなかった」。ただそれだけなのだ。合う人もいる。合わない人もいる。私も、あなたも、悪くないのだ。

お暇、いただきます

しかしまだ、「次」を考える気力は起こらない。求人を見ていると、まだ大丈夫って気もするし、もうダメだって気もするから、しばらく見ないことにした。なにしろ私は今、「ふつう」を取り戻すのが仕事になったから。
やってみたら案外大変で、焦るし、悔しくなる。みんなできるのにとか、自分の市場価値とか、働くの怖いなとか、考え出したらキリがなく、まずはできることからやるしかない。
勉強したり、ポートフォリオだ、エージェントだは、もうちょっと先だろう。
趣味のクラフトだなんだも、少し先になりそう。
とにかく、日々を取り戻す。余裕がなくて全然かまってあげられないどころか追い払っていた長女が、最近「遊んでー」と寄ってきてくれて、本当に嬉しいし、申し訳ないことをしてきたと反省した。

夫が「辞めても1年半は傷病手当金がもらえるみたいだよ」と言うので、期間はわからないけど、しばし、お暇、いただきます。

凪のお暇(1)(A.L.C・DX)

凪のお暇(1)(A.L.C・DX)