機嫌の取りかた

自分の機嫌を取ることで世界を維持する。8歳と5歳の娘と夫と、東京の端で暮らす。

私からの宅急便

先ほどまで少し、いや、けっこう動揺していた。
「私、飛べなくなっちゃった!」
のである。
そう、私、まるで魔法使いのキキ。飛べなくなっちゃったキキ。

といっても決して飛べたわけではなく、私のある「魔法」が消えてしまったのだ。
なくなってしまった魔法。
それはデザイン。

魔法の力が消えた

10年ほどデザイナーとして働いて、4年ブランクがある。
密かにあと1年ちょっとくらいしたらデザイナーで復帰したいな、と思っていたところだった。

ひさしぶりにWebデザイン参考サイトを大量に流し見ていたら、
「あ、これ、私Webデザインできないな」
と悟った。
どのサイトも素敵で立派で目も眩むほど。いったいどういう構成で文法で理論でなりたっているのかさっぱり分からなくなってしまっていたことに気付いてしまった。そしてそれが遅すぎたことにも気付いた。
目の前で折れたホウキを手に、ただ呆然とするしかなかった。

少女にはない強さ

魔法は当たり前に自分の中にあった。
どこがゴールか。何が求められているか。色形ディテールまで。
必要なものを揃える力も、そこから組み上げて完成品を作ることもできた。
魔法。
それが気づかないうちにまっさらさらに消えていたのである。

心底ショックで、右往左往した。
キキのようにトボトボと暗い森を彷徨いかけた時だった。

−−あんたは13歳の魔法少女じゃないよ!

森にこだまする、何かの声。
そうだ、私は38歳のただのおばさんだ。
後ろを見た。細くて頼りないながらもずっと道が続いてきている。
足元を見た。消え入りそうな二つの道。

私にはもともと魔法なんてなかった。
あるのは、前を行く足と草を掻き分ける手。
それだけで来た。自分を信じていい。
今飛べないだけだ。道が途絶えた気がするだけ。
確信を持って、覚悟を持って、一方の道を選び、歩き出す。
私、もう一度デザインの力を手に入れますので。
それは魔法でもなんでもない、「私ができること」。

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