おせちから、聞こえる。
初めておせち作りました。詰めただけとも言う。いや、ちょっと作った。紅白なますとか。
今まではオイシックスのおせち(ほんと美味しいんで、おせちはオイシックス一択です)を買ってたけど、おせち文化のない夫に「家族4人しかいないんだし、おせちに何万もかけなくてよくない?」と言われ、まあ確かにと詰める物を決めて、スーパーでびっくりする値段になってる伊達巻とかを買いました。栗は高すぎて、100円ローソンの6粒入ってるやつにしたけど。
そうして材料は揃えたけど、炊事が嫌いでぐうたらな私は、めんどくさいと先延ばしに延ばした結果、できる限り普段通り作れるものだけ30日の深夜に作るハメになった。計画、だいじ。
しかし煮しめのレシピはどれもこれも飾り切り。さすがに食材ごとに煮たりはしないぞ、とは思ったものの、何もしないと本当に普段通りの食卓になるので、お正月らしさを求めて飾り切りすることにした。
にんじんを型で抜いたり、レンコンを花型にしたり。
うーん、実家から持ってきた年季の入った型抜きも、切れない包丁も、不器用な私も、飾り切りには力不足すぎてグズグズになったけど、それっぽい形になったぞー、と掲げた時、「お花ー!」と聞こえた。「かわいいでしょ?」と振り返ったけど誰もいなかった。
切った材料ぼーんと入れてあとは圧力鍋にお任せして、シュッシュとできあがってパカっと蓋を開けたら、「すごーい!」と聞こえた。「でしょ?」と振り返ったけど誰もいなかった。
それからも、深夜のキッチンで切ったり詰めたり。あ、案外いけるかも、それっぽくなったわーとひとりにんまりしたら、「かわいー!」と聞こえた。
振り返る前に、あ、そうか、と気づいた。
私の中の、長女の声だった。
正直おせちを作るのはめんどくさかった。来年は適当に買うか、全部詰め物にしてやると、「今年は作るわー」と言い出した自分を呪っていたけれど、それでもどこかで長女の「かわいー」と笑う顔を見たくて、花型のにんじんなんて抜いてしまっていたのだ。
おせち、君は偉大だな。こんな年末にもくもくとご飯を作っていたら、その年のことを思い出してしまうじゃないか。これを食べる人たちのことを、考えてしまうじゃないか。
まあ来年は、買うけどね。
もしくはみんなで、にんじんを花の形にしようか。